オンコロ的奇跡の連鎖

     

オンコロ的奇跡の連鎖

 
平成28年4月 連載および追記開始     植松 稔
 

 はじめに

 オンコロジーが10周年を迎える年なので、以前から構想を暖めていた新しい本の出版を考えていました。けれども、仕事に追われる日々、なかなか時間が取れないままに今日に至っています。
 
 最近は世の活字離れがますます進んでいるようですし、ネットは見ても本は読まずにオンコロジーを受診される方も残念ながら増えて来てしまいましたので、今回はまとめてから出版するのではなく、ホームページに少しずつ書き足す形で世に出すことにしました。読者としてはオンコロジー同窓生やオンコロジーの治療を検討される方々を想定しておりますので、出版にこだわる必要もありません。
 
 タイトルは「オンコロ的奇跡の連鎖」。オンコロジーで治療を受けた患者さんの実際の経過を紹介しながら、世間の常識とされる標準治療とは全く異なる治療を受けて良好な経過をたどり、他のお医者さん達から「奇跡だ」といわれるような方々をご紹介する内容です。5年以上経過している患者さんのアンケートと関連する部分が相当多くなりますので、合わせて読んで参考にしてください。
 
 ご紹介する患者さんの経過には、私が全責任を持って医学的な正確さを期しますが、「オンコロジーで治療を受ければ皆こうなる」という話では全くありません。実際に、こうなった方がいるという事実を認識し理解する形で読んでください。
 
 というのも、がん治療の効果は残念ながらすべて結果論なのです。ほとんど同じ病状の方に全く同じ治療をしても、結果は様々であるということが、現代医学の大前提です。生命という現象が、人類の叡智を集めてもはるかに及ばない「とてつもないこと」である以上、結果論になってしまうことは仕方がないことだと思います。 
 
 オンコロ的奇跡が起きるとき、そこには患者さんの身体に備わった免疫の力が大きく関与していると考えています。そう考えないと説明がつかないケースばかりなのです。
 
 ステージ4なのに抗がん剤の力を借りず、むしろそれを排除してから病状が改善していく患者さん達。
 
 リンパ節転移が認められているステージ2−3なのに、標準治療とされる抗がん剤に頼らない道を選び、とても元気に毎日を過ごしている患者さん達。
 
 乳がんや肺がんのステージ1で薬物療法など一切用いずに、世間の一般的な標準治療以上の長期生存効果を上げている患者さん達のグループ。
 
 オンコロジーで治療を受けた方々の実際の長期経過をご紹介しながら、本来あるべきがん治療の本質について考え、明るいがん治療に少しでも近づいていくためのきっかけになればと追記を重ねていきたいと思います。
 
 いずれの患者さんの場合も、患者さんの身体に本来備わっている免疫力、生命力が十分に発揮されることが重要であると考えています。オンコロジーで奇跡が起こるとき、それは患者さんの身体の内側で起きているのです。オンコロジーの治療室は、そのためのささやかなお手伝いをしています。
 
これが、がん放射線治療医35年目の私の現時点での結論です。
 
  

ステージ4なのに抗がん剤を排除し放射線治療して成功

 肺や肝臓、骨などの臓器に転移がでると、がんのステージは4になり、ほとんどの施設では抗がん剤の治療が行われています。それが役に立つ場合もあるのですが、実際には効いていないのに漫然と抗がん剤を継続されている方が多いのに驚きます。効いていないことに抵抗感を感じることもなく、それが最善だと信じ込んでいるお医者さんが増えてしまったようです。とても残念なことです。
 
 オンコロジーでは、ステージ4でも患者さんが抗がん剤の無力さや有害さを実感している場合が多いので、患者さんが望まない限り、極力抗がん剤を使わない方針で治療して来ました。それがとても良かったと考えられる患者さんも珍しくありません。最初は私もそのような現象を明確に説明できなかったのですが、今では自分なりに確信を持てる理由付けにたどり着いています。
 
1. 抗がん剤を漫然と使い続けると免疫力が低下し、がんの進行を早めてしまう危険がある。(これは仮説というより、医療従事者も含めてすでに世の多くの人が十分に認識している事実です。7年前に出版した拙著「明るいがん治療3」の「17. 大量療法は転移抑制に逆効果」にMDアンダーソンがんセンターの臨床研究を紹介しましたが、抗がん剤を大量に使うと乳がんの微小転移がむしろ早く育ってしまい、患者さんの生存率も低下することが示されています。だから、20年前に期待された乳がんの大量の抗がん剤治療はすでに世の中から消滅しています。大量ではない通常の抗がん剤治療の場合、延命効果などの恩恵を受ける人が一部にいますが、せいぜい全体の1−2割、画像検査でがんが消失するくらいの劇的な効果が得られた人たちだけです。がんが多少縮小しても劇的な効果に至らなかった8割の人は、早めに見極めをつけて切り上げることが正解です。)
 
2. 放射線治療を効果的に行うと、がん細胞が破壊されて、組織や血液中にがん細胞の成分が移行し免疫細胞と接触してワクチン効果が出現する場合がある。(がん細胞も常に新陳代謝していますので、何も治療しなくても壊れたがん細胞と免疫細胞の接触はそれなりにあると思います。ただ、寿命が来てがん細胞が自然消滅するのと、治療によって急速に多数のがん細胞が破壊されるのとでは、組織や血液中に放出されるタンパク質などの成分や総量が異なる可能性があります。何十年も前から悪性リンパ腫の放射線治療で、放射線を当てていない部位でも腫瘍が縮小するケースがあるというレポートがありました。同じようなことが、オンコロジーでは一般のがん細胞でも起きている、と考えています。)
 
3. オンコロジーでの治療が始まると、患者さんの身体の内部で、上記の二つの要素が同時にスタートすることになります。抗がん剤の毒性により低下していた免疫の力が、がんと闘えるだけのレベルまで戻るのに、おそらく数ヶ月から1年くらいかかるのだろうと思います。だから、奇跡の連鎖を起こした患者さん達の多くは、オンコロジーを受診してから、新たな転移が全くでなくなるまでに1年くらいかかっているのだろうと考えています。(もちろん、オンコロジーを受診したステージ4の患者さん全員に奇跡が起こるわけではありません。残念ながら最後まで奇跡が起こらない患者さんの方がずっと多いと思います。けれども、標準治療しか行っていない施設ではまず考えられない奇跡が結構な頻度で起きていることは、5年以上のアンケートにお答えいただいた患者さん達の経過をみていただければ容易に理解していただけると思います。)
 
 

リンパ節転移ありなのに抗がん剤なしで放射線治療して成功

 どんながんの場合でも、リンパ節転移があるとステージは1期ではなく2期あるいは3期になります。遠隔転移がなければ4期にはなりませんが、いずれ肺、肝臓、骨、脳などの臓器に転移がでるリスクが高いということで、予防的抗がん剤治療がルーティン化してしまいました。特に、過去に数多くの臨床試験が行われてきた乳がんの場合など、リンパ節転移が見つかると上から目線で「抗がん剤をしないと死にますよ!」と恐ろしい言葉を患者さんにぶつける専門医も結構いるという話を複数の患者さんから聞いています。とっても嫌な感じ・・・ですね。
 
 実際に、世の中にあまりに抗がん剤の治療が浸透してしまったため、リンパ節転移がある場合、抗がん剤治療を受ければ治り、受けなければ治らないと信じ込んでいる方さえ結構いるようです。しかし、これは大きな間違いです。
 
 目に見えるがんの塊が存在する場合、抗がん剤の治療で腫瘍が小さくなることは珍しくありませんが、がんが完全に消失することは滅多にありません。転移がでてから、生まれて始めて抗がん剤を使った場合は完治したと思われる率3−4%、過去に抗がん剤を使った後にでてきた転移なら完治率はほぼ0%です。
 
 4年前に出版した「抗がん剤治療のうそ 乳がんをケーススタディとして」に詳しく解説致しましたが、リンパ節転移のある2期、3期の乳がんの患者さんに、手術前後に抗がん剤を使うことで、臓器転移の予防になる患者さんは、100人のうち3−4人しかいません。しかも、その転移の予防になるくらい抗がん剤がよく効く患者さんの場合、転移がでてから使っても同じように驚くほどよく効きます。だから、最初の治療のときに予防的に用いても、転移がでてしまってから治療として用いても、最終的に長期生存率は同じになっているのです。これがエビデンスに基づく本当の結論です。
 
 多くの専門医達がエビデンスと呼ぶ一流の医学論文を正しく読み解けば、実は上記の結論にたどり着きます。つまり、現在の世間の常識・標準治療とはまったく異なるがん治療のあり方が本来あるべき姿なのです。しかし、論文を正しく読めない専門医や、本当のことに気づかない振りをするたちの悪い輩で学会が構成されているため、世の中に本当にことが伝わりません。原子力発電所の安全神話を皆が信じさせられていたのと基本的に同じ構図です。
 
 正しく理解し自分で思考する能力のある患者さんなら世間の常識の間違いに気づけるだろうと期待して「抗がん剤治療のうそ」を書きました。その後、オンコロジーを受診された患者さんの中には、本当のことがよく理解できました、とおっしゃってくださる方が以前より増えて来てきた印象です。
 
 けれども、すでに大多数の日本国民が、原子力発電所などというものが存在していること自体が間違いである、と気づいているのと比べれば、理解の度合いは不十分と言わざるを得ません。ただ、国家権力に期待しても原子力発電所どころか核兵器さえ減らすことはできません。だから、学会など権力の側から無駄な抗がん剤治療をなくす提案を期待しても無理でしょう。本当のことに気づいた患者さん自身が止めるしかありません。
 
 オンコロジーを受診した2期や3期の患者さん達が、抗がん剤の助けを借りずに元気にしている事実を知って、それをこれからの自分の治療のあり方に反映させることができる方が一人でも増えてくれれば、というのがこの章の目的です。
 
 なお、オンコロジーでは放射線治療の期間中のみ少量の抗がん剤を併用することがあります。これは放射線の効果を高めるためです。投与量が非常に少なく副作用もほとんどないのですが、抗がん剤としての効果・効能を期待して用いているわけではありません。
 
今回はここまでです。5年以上経過した患者さんのアンケートの中に、ここでご紹介した奇跡の連鎖に該当する患者さんを何人も見つけることができます。探してみてください。

 
 

☆「治療後5年以上経過している患者さんの声」はこちらから ⇒

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