がん治療の実際(肺がん編)

当クリニックでの放射線治療の実際を画像・イラストを使用しご紹介致します。
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肺がん

肺がんピンポイント治療

私たちが、世界最初のフォーカル・ユニットを完成させ、肺がんなど、脳以外の臓器のがんに三次元ピンポイント照射を行うようになったのは、1990年代前半ですから、もう10数年前のことになります。それまでの放射線治療とはまったく異なる照射方法でしたので、当時は医学会でもなかなか理解されずに、無意味な批判をよく受けたものでした。
しかし、その理論を理解できなかった人たちも、私たちが実際の治療成績を発表すると、有効性が分かったらしく、肺がんの三次元ピンポイント照射は、世界に広く受け入れられていきました。

写真1に示した患者さんは、私たちが治療してからすでに12年以上お元気にしておられます。今もときどき外来でお顔を拝見しておりますが、拙著「明るいがん治療:切らずにピンポイント照射」(三省堂、2003年)に、「こんなにきれいな照射後の肺」という印象的な文章を寄せてくださっています。

<写真1>※↓左側が治療前  ↓右側が治療後
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私たちは、原発性肺がんと転移性肺がんを合わせますと、延べ700人以上の肺がんにピンポイント照射を行ってきました。
初めの3−4年間は、局所制御率(照射したがん病巣が二度と大きくならないこと)が99%という、とてつもなく良好な成績が続きましたが、大勢の患者さんを治療して、その経過を長期間みるうちに、一定の頻度で再発や転移も認めるようになり、10数年の経験から、局所制御率97%、早期(1期)の肺がんの長期生存率78%という成績に落ち着いてきています。これは驚くほど優れた治療成績で、この治療に熟練した放射線治療技師の方々と、日々細心の注意を払い続けて、照射してきた賜物だと考えておりますが、なかなか他の施設では到達できない成績だと思います。

この10年あまりの間に、印象的な患者さんも多かったのですが、早期の肺がんで、まず重粒子線治療を受けたところ、いったん縮小はしたものの、結局は局所に再発し、再発後に私の外来を受診して、私たちが三次元ピンポイント照射したところ、今度はきっちりと完治された働き盛りの男性患者さんなどは、本当に特筆すべきといえるでしょう。

これまでに、さまざまな学会や研究会で講演したり、欧米の医学専門誌に論文を発表したりしてきましたが、「本当に世界中から認めてもらえた」と、自信を深めることができたのは写真2の
「 Cancer: Principles & Practice of Oncology」 という有名なアメリカのがんの教科書が、私たちの論文を唯一の根拠に、肺がんの三次元ピンポイント照射を紹介してくれたときでした。
これは2001年のことでしたから、もう7年前(2008年記述当時)になります。
記載されている内容は新しい技術の紹介ということもあり、コメントもやや辛口ですが、このころから急に肺がんに三次元ピンポイント照射をはじめる施設が増えてきています。

<写真2>
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以下の写真も私たちが過去に治療した患者さんたちの治療前と治療後の画像です。

ケース1.※↓左側が治療前  ↓右側が治療後
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ケース2.※↓左側が治療前  ↓右側が治療後
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ケース3.※↓左側が治療前  ↓右側が治療後
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ケース4.※↓左側が治療前  ↓右側が治療後
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ケース5.※↓左側が治療前  ↓右側が治療後
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ケース6.※↓左側が治療前  ↓右側が治療後
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ケース7.※↓左側が治療前  ↓右側が治療後
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このように、肺がんのピンポイント照射は十分な成果をあげたわけですが、私たちは、それで満足したわけではありません。
フォーカル・ユニットは、他の装置より、はるかに使いやすく優れています。
しかし、それでも、いくつかの欠点があることを、設計し使用してきた私たち自身が、誰よりもよく知っています。

その欠点を克服した新しい装置、スーパー・フォーカル・ユニットの設計も数年前にできていたのですが、利潤追求しか考慮しない医療機器メーカーが生産に消極的で実現しませんでした。
それが、厚地記念・放射線医学研究所・理事長・厚地政幸先生のご英断により、このたびUASオンコロジーセンターに設置できたのです。
莫大な投資が必要でしたが、私財を投げ打って私たちの治療を支援してくださいました。
この装置を活用し、これまで世界のどこでも実現していなかった「真の四次元照射」を含め、最高精度の放射線治療、身体にやさしいがん治療を実践していきたいと考えています。

また、話はかわりますが、ピンポイント照射について、近年、心配なことも増えてきてしまいました。
「ピンポイント照射」という言葉が独り歩きするほどに世に知られるようになり、あまり実力のない病院でも試されているようなのです。高精度の放射線治療は、知識と経験の豊富な放射線治療医熟練した繊細な放射線治療技師、精密かつ使いやすい治療装置の三者がそろったときに初めて良い治療になります。どれひとつ欠けてもレベルは格段に低下するのです。ところが、伝え聞くところによりますと、最近は、まともな放射線治療医がいない施設がピンポイント照射を始めたり、三次元照射さえもできない装置なのに、ピンポイント照射の専用機であるかのごとく宣伝されたり、本来なら10メガ・ボルト以上の高エネルギーで照射すべき身体の中心部のがんを、6メガ・ボルトの出力しかできない装置で治療する施設が増えたり、といった本質を踏み外したことが、実際に起きているらしいのです。

これまで本来の役割を果していなかった放射線治療が世間に広まり、切らずに治るがんが増えていくことは、本当に喜ばしいことです。
しかし、日本の場合、困ったことに、放射線治療の担い手(専門の医師や技師)はなかなか育っていない反面、放射線治療装置の売買だけは、多くの場合、税金が投入されて容易かつ安易に行われています。
この本質が変わらないうちは、残念ながら、混乱した状況は改善されにくいのだろうと思われます。

「自分の身は自分で守る」というのは社会生活の原則のひとつですが、当面、がん治療を受けるときにも、それを思い出して、正しい情報を集めて治療の判断をする必要があるように思われます。
 

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