がんと食事について

がんと食事について(高いエンゲル係数を目指しましょう)

がんになると食事を気にされる方が大勢います。実際、この30年間で乳がんや大腸がんなどが日本人に著しく増加したのは、食事の欧米化によるものが大きな原因でしょう。
乳がんの患者さんでは、動物性のタンパク質を控えたり乳製品を摂らないように注意している方が多いようですし、それが良い結果につながる場合もあるかもしれません。
しかし、治療中も治療後も栄養失調は禁物です。

日本人の平均寿命がグンと伸びたのは、タンパク質をしっかり摂れるような食生活になってからです。
江戸時代の農民の平均寿命はかなり短かったのですが、事件に巻き込まれない限り身分の高い侍の寿命は決して短くはありませんでした。
栄養のある物を食べていたかどうかの違いです。
明治や大正の頃でも平均寿命は50歳に満たなかったようで、もちろん周産期死亡や戦争の影響もあるでしょうが、栄養のある物をしっかり食べられる人が少なかったことが最大の原因だと思います。

植物性のタンパク質でも魚介類でも、四つ足以外はOKという場合は鳥のささみや卵の白身でもよいですからきちんと食べましょう。
タンパク質をしっかり摂らないと、治療中に白血球が減ったり、貧血が進んだりしやすくなります。
多分免疫力も低下します。
できるだけ健康な生活のためには、旬の野菜などからビタミンやミネラルもバランスよく摂りましょう。
便秘しないこともとても大切です。
それまでの食生活があまりに脂肪過多、カロリー過多であった人が食事制限して健康になった例はしばしば経験しますが、もともと健康に気をつけて食事をしていた人がさらに粗食にすると、逆効果になる危険性があります。

また最近、食事が欧米化したという表面的な事象だけで結論づけるのは片手落ちで、日本人にがんが増えた最大の原因は、土や水が汚れてしまったことも大きいのではないか、と考えるようになりました。
高度経済成長以降、大量生産のために農薬がたくさん使われるようになりました。
ゴルフ場などで除草剤も散布されているでしょうし、産業廃棄物の処理なども含めて工場からの煙や廃液に何が含まれているのか、本当のことはよくわかりません。
この30-40年間で、様々な化学物質が地球上に広くばらまかれたことは明白です。
地球が持つ自浄作用ではとても追いつかないだろうと思います。

また、別の意味でも食の安全について心配は尽きません。
私たちが個人レベルで遺伝子組み換え食品などに気を配ったとしても、農作物に与えられる肥料や家畜の飼料まで調べることは難しいですし、天然物の魚でも養殖のいけすの近くにいたらエサは同じです。
大量の牛乳を生産するために女性ホルモンが餌に混ぜられたり、早く動物を育てるために成長ホルモンが飼料として投与されることもあるように聞きます。
それに、そもそも食品偽装されてしまったら消費者は手も足も出ません。

真の解決策など到底思いつきませんが、自分ではエンゲル係数の高い生活を目指そうと思っています。
もともとエンゲル係数は、低ければ低いほど、より文化的な生活を送っている指標として提案されたものです。
しかし、よく考えてみると「心からおいしいと思って食事をすること」以上の幸せは、日常生活の中にあまり見当たらない気がします。
本当に欲しくてたまらない趣味の物を手に入れる喜びは確かにあると思いますし、どうしても訪れたい場所や体験したい事柄もあるでしょう。
けれども、本当に好きな物、本当に大切な物には当然限りがあるはずで、もっともっと欲しいとか、いくらでも欲しいというのはちょっと違うような気がします。

今日食べた物を材料にして、明日からの自分の身体が創られるというのは、間違いのない事実です。
だから、より安全で安心で、しかも旬にこだわった食材を求めて、少し食べ物にお金をかけてエンゲル係数を上げる、これが現代では最も文化的で健康な生活ではないかと考えています。
十分な時間があるならば、全国の生産者の顔が見えるような食品を探してみるような贅沢がしてみたいものですが、個人レベルではなかなか難しいでしょうね。