オンコロ的奇跡の連鎖 5 患者さんからの手記「82歳で大腸がん、しかもステージ4になるなんて・・・。」 

この手記を書いてくださったのは、今年の春に卒寿を迎えられる女性です。
大腸がんの手術後に肺転移やリンパ節転移、単発の後腹膜転移が出て、手術から1年後に当方を初診されました。
肺転移とリンパ節転移は放射線治療でコントロールでき、7年近く再発していません。
後腹膜の転移病巣は放射線治療後に一旦消失したかに見えましたが、3年後に再増大して2回目の放射線治療、さらに1年後に再増大して3回目の放射線治療を行いました。これは病巣が大腸に接していて、あまり強い照射ができなかったことに起因していますが、結局3回照射しても制御しきれず、3回目の照射から1年後に外科手術をして切除してもらいました。
3回も照射していたので、癒着が起こり手術が難しくなっているのではないかと心配していたのですが、外科医の話ではそのようなこともなく、接していた大腸にも放射線のダメージがほとんど出ていなかったので、小さな手術で済み負担の軽い形で治まりました。
この後腹膜の病巣に対して、再発を繰り返していた時期に、TS-1という抗がん剤の内服を試してもらったこともあったのですが、特に効果はなく、思いのほか副作用を強く感じられたので、短期間で終了しています。
過去7年間を振り返り、患者さんの自覚症状が最も悪かったのは、この抗がん剤の内服をしていた期間で、それ以外の時期は、がんの転移が認められていた時でさえ、とてもお元気でした。
現在も腫瘍マーカーのCEAが多少高めなので、どこかに小さな病巣が隠れているのかもしれませんが、最後の手術から無治療で2年半お元気に過ごされており、まもなく卒寿です。
「がんの治療は必要最小限!」が鉄則だと考えていますが、この方も典型的な例です。
 
 

「82歳で大腸がん、しかもステージ4になるなんて・・・。」 
                         平成30年1月 河○○子

 
もともと便秘がちだったのですが、2010年6月に腹痛がひどくなり、お腹もずいぶん張るので病院に行くと、上行結腸癌で腸閉塞になりかけていると診断され、7月に大腸の右半分を切り取る手術を受けました。このときにリンパ節転移はないものの、腎臓の近くまで癒着があり、ステージ2であったそうです。
術後は、年齢を考えて無理な抗がん剤治療はしないで経過をみることになりましたが、半年後にはCTで左肺にドーナツのような形の転移がでて、膵臓にも腫瘍がみつかり、ステージ4の状態だと説明されました。
肺は即手術、膵臓は抗がん剤で治療するとのことで、「もし治療しなければ余命半年です。」といわれ、途方にくれてしまいましたが、鹿児島にできたオンコロジーセンターの話を思い出し、早速オンコロジーセンターの植松先生をお尋ね致しました。
あらためてPET-CTの検査を受け、肺転移と膵臓近くのリンパ節転移と思われる強い取り込みを確認し、腫瘍マーカーも上昇傾向が続いているということで、手術はせず、放射線治療をしてみましょう、とのことでした。

夢のような治療がほんとうにあるのかしらと思いつつ、いろいろお話を伺ってお願いすることに致しました。
数秒の照射、疲れもせず本当に短時間の治療で癌が消えるのかなぁと思いながら、毎日照射に通いました。
友達から折角だから抗がん剤も飲んだらなお効果があるらしい・・・と聞き、先生にお願いして飲むことにしました。
別に何事もなかったのですが、3.4クール続けるうちに体調が良くなるどころか、今まで経験のしたことないような具合の悪さ。
先生にお話し致しましたら、人それぞれ、本人が希望されるなら薬も出しますが、余り、自分としてはおすすめしません。気休めのような気がします。しばらく止めてみましょう、と薬を止め、しばらくしたら体調も良くなりました。

放射線治療がすべて終わって、PET-CTを撮ると、以前のカゲが薄くなり、腫瘍マーカーも低下していました。
その後国内や海外まで長期旅行もでき、自分でもこの年まで元気に過ごせる幸せをかみしめております。
最初の放射線治療の後も、定期的に行っているPET-CT検査で、もともとの大腸がんの近くに新たな転移病巣が見つかり、そこにも放射線治療を行いましたが、数年後にぶり返して、結局手術をしてもらいました。
このように、完全に病気との縁が切れたわけではありませんが、今は3ヶ月ごとに採血して植松先生にお世話になっております。早期発見が一番だと思って年を重ねています。
すばらしい先生にお会いでき感謝の毎日です。
お友達にもこんな治療があることを頭の隅に入れておかれるように話しております。