オンコロ的奇跡の連鎖 8 患者さんからの手記「ステージⅣの前立腺癌と14年近く付き合っています。」

腰痛で病院を受診して、前立腺がんと骨転移がみつかった患者さんの手記です。
当初からステージ4で、血液を調べるとPSAは9200という値でした。私も前立腺がんの患者さんを過去に数百名診てきたと思いますが、初診時9200というのは最も高い値だと思います。当初から骨転移があったので、ホルモン療法からスタートするのは当然の選択です。とりあえず、ほとんどの患者さんでは劇的な効果が認められ、完治したのではないかと錯覚されることも珍しくはありません。
しかし、実際に完治することはなく、薬剤を変更しても数年のうちにホルモン療法は効果がなくなってしまいます。その段階で抗がん剤の治療が勧められることが多いのですが、一時的にPSAが低下することはあっても体力も奪われてしまうので、本当にメリットがあるのか、デメリットの方が大きいのか、微妙な話になります。
この方は、しばらく抗がん剤を受けた後、あまり効果はなく副作用はあったので、放射線治療に切り替え鹿児島にお見えになりました。当初の病状を把握するため、治療前の画像を詳細に検討して、前立腺ばかりでなく骨転移に対してもしっかりと放射線治療をおこないました。そして、それが正解でした。
放射線治療後、6年間近い無治療期間が得られるほどに病状が改善し、その後、結局肺に転移はでたものの、新しく開発された薬剤の助けも借りて、ステージ4で発症してから14年間、ご病気とつきあいながら、ご自宅で過ごすことができています。
これからのご病気の経過によっては、また放射線治療がお役に立つ可能性もあるかもしれませんが、なにぶん傘寿のお祝いを済まされた方ですので、無理をしないのが一番の治療であることは間違いがありません。
 
 

「ステージⅣの前立腺癌と14年近く付き合っています。
 放射線治療がよく効いてくれたことが一番の支えになったと思います。」

                        平成30年2月  T.E

 
私が前立腺癌と診断されたのは2004年の7月、66歳の時でした。腰が痛いので病院を受診したところPSAの値が9200、細胞の検査でグリソンスコア4+4=8、骨に転移しているステージⅣの前立腺癌ということで直ちにゾラデックスとカソデックスというホルモン療法が開始されました。1年後にはPSAの値が0.083まで低下しましたが、その後徐々にPSAが上昇してしまい、ホルモン療法の種類を変えたりして経過を見ていましたが、2006年の9月にはPSAが2.9、2007年の6月には11.5と上昇したため2007年の8月から抗がん剤のドセタキセルが始まりました。
4回程ドセタキセルの治療を受けたのですが、体調が悪くなっていくことを自覚したので別の治療はないかと探し、2008年6月に鹿児島のオンコロジーセンター(現UMSオンコロジークリニック)を受診しました。この時にはPSAの値が20以上にまで上昇していました。抗がん剤の治療でPSAの値はわずかに低下したこともありましたが、2ヶ月程で再上昇に向かっておりました。
鹿児島のオンコロジーでは発病当初の治療を何も行っていない時の骨シンチの写真や、その時のCTなどの画像も含めて検討していただき、前立腺癌そのもの及び骨転移の両方に対して放射線治療を行なっていただきました。あまり大きなダメージを感じることもなく治療を終了し、2008年末にはPSAの値が0.009まで低下しました。
その後は特に治療を受けることなく、時々採血しながら、自宅で元気に過ごしていましたが、6年後の2014年の4月にPSAの値が4.83まで上昇してきたので、2014年6月に全身の検査としてPET-CTを受けました。この時に肺に転移が何カ所か出ていることが分かり、PSAの値も41.7まで上昇していました。
この肺転移が見つかったときも、もともとの前立腺や骨転移はコントロールされたままでした。
再び鹿児島のオンコロジーで肺転移に対しての治療を行ない、2015年の6月まで1年かけて時々肺転移に対する治療を繰り返す形になりました。肺転移に対しての放射線治療は10ヵ所程行ないましたが、それでもPSAの値が完全に下がりきらない状態で、PET-CTでも治療できていない肺転移がまだ認められている状況でした。
しばらくは治療せず様子を見ましたが、結局薬物療法に戻ることになり、今はイクスタンジという薬を使いながら自宅で元気に過ごしています。一旦効かなくなったホルモン療法の後にドセタキセルという抗がん剤もほとんど効果がなかったのですが、何年間も薬物療法を行っていなかった間に、新しい薬が開発され、再び薬物療法が効果を上げてくれて今日に至っています。現在のPSAの値は7.5と聞いております。
このような経過でお薬の治療や放射線治療を組み合わせてステージⅣの前立腺癌と14年間付き合うことができています。最近ではごく小さな胃癌が見つかったため内視鏡による治療も間もなく受ける予定になっています。前立腺癌の骨転移の診断がついた時は60代の半ばでしたが、すでに80歳を超えております。
なお、明るいがん治療2の134ページも私の手記ですが、それからもずいぶん長い時間が経っていることを今回実感しました。

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