積極財政でないと日本が滅びる理由

 プライマリーバランス黒字化というあり得ない目標を、財務省の官僚が掲げてしまい、
それに自民党など多くの政治家が同調したために日本は破滅に向かっています。
中高年以上の高度経済成長期の日本を知っている人達にとって、現在の日本の凋落ぶりは
まさに悪夢、信じられないレベルだと思います。

 今回は、なぜプライマリーバランスの黒字化を目指してはいけないのか。なぜ日本が発
展するためには国債発行による積極財政が必要なのか。小学生にも理解してもらえるよう
に考えましたので説明したいと思います。

 日本の国に円が流通しているのは国が通貨発行したからです。国民は、どんなに価値の
ある不動産や貴金属を持っていても、買い取ってもらわない限り一円のお金も手にはでき
ません。高価なものを持たない多くの国民は、主に労働の対価として給与などの形で日本
円を手にします。

 原点に返って一から考え直してみましょう。
 
 ある年に、国民の一年間の労働に対する対価として、国が初めて1億円の日本円を発行
して国民に分配したとします。海外との貿易はとりあえず一旦無視して話を進めます。
日本国内のお金の総額は1億円、次に国が通貨発行するまで日本円は増えも減りもしませ
ん。この1億円は労働の対価として国民に分配されるわけですが、国民の労働は様々なの
で、たくさんもらえる人もいれば、あまりもらえない人もいます。

 国はたくさんもらえた人からはそれなりに徴税できますが、それでも全額徴税したらそ
の人は破産し餓死します。だから、仮に最高税率50%としましょう。あまり日本円を手
にできなかった労働者からは少ししか徴税できません。仮に5%の税率としましょう。国
民全員が大金持ちで全員の税率が50%なら税収は5000万円になりますが、現実からはほ
ど遠いですね。全員が貧しくて税率5%なら国の一年間の税収はわずか500万円です。こち
らの方がより現実的ですね。

 つまり、国が一年間に発行した1億円に対しての税収は多くて5000万円、少なければ500
万円です。この税収だけで翌年の国の予算を組み立てようという考え方が、プライマリーバ
ランスの黒字化です。絶対にあり得ない。翌年も同じ労働に対して同じ報酬を国民に分配する
なら、最低でも5000万円、多ければ9500万円の新たな通貨発行をしなければ足りません。
これは小学校低学年の算数でも自明ですね。しかも、それでもGDPは全く伸びず前年と同じ
横ばいです。

 現実の経済では海外との貿易もあり、日本企業の業績が良ければ、海外からお金が入って
きます。その場合、税収はもう少し増えますが、日本の国のGDPと同じくらいの貿易黒字で
なければ、結局毎年の通貨発行が必要になります。もしも、日本が中東の産油国のように地
下資源だけで湯水のように外貨が入ってくるのであれば、国債を発行しなくても経済が廻る
可能性はありますが、残念ながら日本はそんな国ではありません。

 現実の日本は輸入した資源を加工して細々と貿易黒字を出しているだけですから、国債の
発行以外に経済を廻す手だてはありません。それを国が拒んだら、国民は年々貧しくなり、
いずれ国も破滅します。これがプライマリーバランスの黒字化という「脳みそが沸騰した人
にしか考えられない政策」の本質です。

 このようにプライマリーバランスの黒字化というのは、現実的には絶対に実現不可能な目
標なので、国の予算は毎年の国債発行で維持されています。作為的に赤字国債とよばれてい
ますが、他国に借金しているわけではありませんし、将来にわたって誰かに返済していく義
務もありません。国民が一定の冨を得て生活するには、一定の通貨発行が毎年必要なのです。

 ただ、短期間に過度の通貨発行をしてしまうと、他国とのバランスで円安が進んでしまい
ますし、商品の供給能力を超えて通貨発行すると、インフレが進むことになります。しかし、
30年前までの高度経済成長の期間、毎年インフレが続き、不動産を含めてすべての商品の値
段は上がり続けていましたが、貿易黒字がとても大きく国民の収入が増え続けていたので日
本の経済は順調に廻っていました。だから、あの時代の日本でさえハイパーインフレなどと
呼ばれることはないのです。

 ただバブルを発生させてしまったのが最大の失敗で、財務を扱う官僚と政治家の能力不足
でした。あのときこそ不動産売買の利益に対して大きく課税し、高くなり過ぎた銀行の金利
を下げるなどの政策をうち、バブルを抑えて経済をコントロールすべきでした。さらに、未
来を見据えてグリーンエネルギーに切り替えるなどの国の産業の大幅な転換が必要だったの
です。

 バブルが崩壊してからの30年間、日本は毎年、税収と同じくらいの国債発行を続けて国の
予算を組んでいますが、そんな経済政策では、前述のようにGDPは伸びません。先進国のG
DPが軒並み1.3~1.4倍に増えている中で、唯一無成長のGDP横ばい国家を貫いています。
正に政治の無能さと官僚機構の前年踏襲という愚かさの象徴です。

 アベノミクスは発行した大量のお金を仲良し企業だけに配ったので、上場企業の株価は上
昇しましたが内部留保が進んだだけで、経済の成長にはつながりませんでした。結果として
デフレが30年近く続いています。GDPの主体は国内での消費ですから、消費意欲にブレーキ
をかける消費税こそが最悪の施策です。消費税を廃止し、新たに発行したお金を国民全体に
行き渡らせれば、未来への不安が減り景気も回復します。50年経って老朽化した社会インフ
ラの再構築、未来を担う若者への教育投資、グリーンエネルギーへの転換への設備投資など、
国にできて国民が潤う政策はいくらでもあります。

 日本国民は戦後の焼け野原から数十年で高度経済成長を実現しました。あの時代は世界中
から疎まれる程でした。今は政治が愚かで、官僚に自浄作用が乏しく、財界のトップが今だ
け金だけ自分だけの情けない人達なので、恐ろしいほどの凋落ぶりです。しかし、日本人が
本来の姿に戻れば、世界でもトップクラスの成長能力があることを思い出しましょう。
未来のため、若い世代のために日本社会を変えなければいけません。

 私は「れいわ新選組」が政権中枢になるような政治改革・政権交代を起こさないと、日本
の凋落は止められないと思います。積極財政・消費税廃止が「れいわ新選組」の原点です。

                           2022年6月15日  植松 稔