私たちが治療のガイドラインを重要視しない理由

UMSオンコロジークリニックでは、一般の大学病院やがんセンターと違って学会が推奨するガイドラインなどを重要視していません。
20年以上にわたって独自に開発してきた治療方法を駆使しながら、ひとり一人の患者さんの病状を詳細に調べて、ご本人のご希望をきいて、その全身状態を診ながら治療を組み立てています。
その結果、過去にガイドラインに沿った治療を受けたものの、あまりよい結果が得られなかったという患者さんの中にも、私たちの治療を受けて病状が改善している方が珍しくはありません。
私たちがガイドラインに頼らない理由を簡単に説明してみましょう。

様々な臓器のがんには学会などが推奨する治療のガイドラインがありますが、これに従って同じ治療を受けても、治る人もいれば治らない人もいます。
これはどうしてなのか考えてみたことがあるでしょうか。
たとえば、1期の大腸がんで手術を受けた人が治って、3期の大腸がんで手術を受けた人が治らなかったという話なら、病気の進行度がまるで違っていたわけですから結果が違うのは当然だと納得できます。
しかし、同じ1期の大腸がんなのに、ある人は手術だけで完治したが、別の人は手術後に再発・転移がでた。さらに別の人は手術後に念のために抗がん剤治療までしたのに再発・転移がでた。というようなことが現実にしばしば起きています。
これはどうしてでしょう。
また、乳がんなどの薬物が良く効くとされるがんが転移すると、様々なホルモン剤や抗がん剤の治療が行われますが、これらの薬が劇的に効いて転移がすべて消えてしまったという人もいれば、抗がん剤で 相当つらい思いをして頑張ったのに、がんは少しも小さくならなかったという人まで、その治療効果は本当に様々です。
同じ乳がんなのに、どうして薬が良く効く人と、ぜんぜん効かない人がいるのか、その理由はなんでしょうか。

実は答えは簡単です。
大腸がんにせよ、乳がんにせよ、その他のがんにせよ、病名は同じでも、実は同じ病気の人など一人もいないからです。
もう少し正確にいうと、ひとり一人のがん細胞の遺伝子は、その一部分が違っている可能性が高いからです。薬が効きやすいかどうか、転移しやすい性質を持っているかどうか、すべてがん細胞の遺伝子で決まるわけですが、現代の医学では複雑な遺伝子の仕組みの解明には、まだまだ遠く及びません。
マスコミなどからの情報を聞いていると、ずいぶん分かってきたような錯覚に陥りますが、本当は緒についたところで、ごく一部分がわかってきただけです。そして、たぶん今後何十年経っても、本当に解明されることなどないだろうと思います。

本当は遺伝子の一部分がまったく違う別の病気なのに、大腸がん、乳がん、肺がん、胃がん、食道がん、肝がんなどと一つにまとめてしまうから、同じ治療の結果がずいぶんと異なるわけです。けれども、そうではなくて、実はひとり一人のがんはみんな遺伝子が少しずつ違う別の病気なのだということに気づけば、同じ病名で同じ治療を受けても、その結果がまったく異なったところで、むしろ当然なことと理解できるはずです。

そもそも、がん細胞は正常な細胞が遺伝子の異常を起こして始まる病気です。通常は遺伝子の異常が起きた細胞は長生きできないのですが、たまたま長生きできて細胞分裂を繰り返していくと、大きくなってがんと診断されるわけです。そして、がん細胞になった後も、また遺伝子の異常を起こして別のがん細胞に変わっていく可能性もあるのです。実際に、最近の基礎医学の研究では、一人の患者さんの、一つのがんの塊の中にさえ、複数の遺伝子パターンを持ったがん細胞が混在していることが当たり前のように確認されています。
本人の中だけでも一様ではないのですから、ましてや他人のがんと自分のがんがまったく同じ構造であったら、むしろ不思議なくらいなのです。

そもそも、ひとり一人の人間も、人間である以上、かなりの部分で遺伝子は同じでしょうが、ほんの少しは異なるからこそ、地球上に同じ人間は二人といないわけです。
つまり、病気になる前の健康な身体の状態でも、すでに遺伝子が異なっていた個々人から発生したがん細胞の遺伝子ですから、それが同じであることのほうが、かなり珍しい偶然とでもいうべきものでしょう。
もちろん、がん細胞の場合も、大腸がん、乳がん、肺がん、胃がんなど、それぞれに共通の遺伝子は多数あるでしょう。
しかし、おそらくはほんの少し遺伝子が違うだけで、まったく別の性質を備えたがん細胞になってしまうわけです。
だから、同じ治療をしてもその結果は大きく異なってしまうわけです。

人間は、人間が作り出したものを進化させ発展させる能力には、ものすごいものを持っていると思います。産業革命以降の通信手段や交通手段、あるいは一般の電化製品などの進歩などを考えると、本当に驚くものがあります。一方で、地球、宇宙、あるいは生命といった人間が生まれる以前から存在していたものに対しては、理解を深める能力はそれほど高くないように思います。
日食や月食の日時は、規則的に運動しているものに対する、ただの数学の計算だけなので、コンピュータの進歩でかなり先まで簡単にわかりますが、自分たちの足元で起こる地震の予知はきわめて困難で大雑把な予想しかできませんし、衛星をたくさん飛ばすようになった今日でも毎日の天気予報はよく外れます。
おそらく、人類にとって、遺伝子や生命といった超難問を解明しつくすことは、宇宙を完全に解明することと同じくらい大変なことであり、たぶん永遠に不可能ではないかと私は予想しています。

ガイドラインというのは一定のグループの患者さんたちを一まとめにして、同一の治療方針を当てはめようとする行為ですが、ある人にとって望ましい治療法が別の人にとっては不適切である、ということが現実にはたくさん起きています。
そして、それは上述のように、がん細胞の遺伝子が様々であることに起因していると気がつけば、むしろ当然の結果だと考えられます。だから、ガイドラインに個々の患者さんを当てはめるような発想は、そもそも理にかなっていないのです。ひとり一人の体調や病状をできるだけ正確に把握して、ひとり一人の人生観や希望を聞いて、そこからそれに見合った治療方法を組み立てていく。
必要な部位にはしっかり放射線をあてて、不必要な部位は極力避ける。無駄な休止期間を取りたくない場合は土日や祭日も休まず治療を続行し、必要なときにはしっかりとした休息期間を置く。放射線の効果を高めるのに有効だと考えれば、保険適応の有無にかかわらず薬物療法の併用も考慮する。そして、その治療がその患者さんに合っているかどうかを常に振り返りながら、その先の治療内容を検討していく。

私たちUMSオンコロジークリニックは、これからもこのような方針で診療を進めていきたいと思います。
だから、画一的なガイドラインを重要視することはこれからもまったくありません。